毎年恒例となっている奥さんと「原岡海岸」に行く旅行。訪れたのが今年の6月なので、数ヶ月の時間が空いてしまったのはここだけの話。
「原岡海岸(岡本桟橋)」は千葉県の南房総市の原岡海岸にある木製の桟橋で、奥さんと縁のある地なので毎年同じ時期に訪れている。
去年はブラックミストNo.1縛りで撮影したのだけれど、今年は「写ルンです」縛りで撮影してきた。普段フィルム一眼レフカメラで撮影しているので「写ルンです」を使う機会も無く、しっかり撮影するのは今回が初めてのような気もする。
最もポピュラーなフィルムカメラでもあるので、今更ながら「写ルンです」で撮影してみてどうだったか、原岡海岸での作例を紹介しつつレビューしていこうと思う。
エモいの代名詞!「写ルンです」とは
「写ルンです」とは1986年に富士フイルムから発売されたレンズ付きフィルム。ピントを合わせる必要が無く、誰でも簡単に扱えることから、爆発的な人気を誇り富士フイルムの顔のような商品だった。
近年のデジタル機器の進化により、数多くあった写ルンですシリーズも今では「シンプルエース」の1タイプのみの出荷となってしまった。
しかし、ここ数年で巻き起こっている「エモい文化」の流行に乗るようなカタチで若者達から「写ルンです」にも注目が集まっている。
因みに余談だけれど、「写ルンです」の「ルン」が何故カタカナかと言うと、当初製品のネーミング案で「写るんです」に「ルンルン気分」を足したら「写ルンです」のカタチになったらしい。良い時代というかなんとも昭和らしい(笑)
「写ルンです」の使い方
- 袋からカメラを取り出す
- 右手の親指でジージーとフィルムを巻く
- ストロボが必要な場合は、ストロボのボタンを押す
- シャッターボタンを押す
- 上限まで撮影し終えたらそのまま写真屋へ持っていく
馬鹿にしているのか!と怒られそうなくらい簡単に扱うことができる。今はデジタル世代である若者を中心に「写ルンです」が流行しているので、一応参考までに。
「写ルンです」は何故ピントを合わせる必要がないのか
フィルム | ISO400 135フィルム |
---|---|
撮影枚数 | 27枚 |
レンズ | f=32mm F=10 プラスチックレンズ1枚 |
シャッタースピード | 1/140秒 |
撮影距離範囲 | 1m~無限遠 |
ファインダー | 逆ガリレオ式プラスチックファインダー |
フラッシュ | 内蔵(有効撮影距離:1m~3m) パイロットランプ付スライド式フラッシュスイッチ |
電池 | 単4形 1.5Vアルカリマンガン乾電池内蔵 |
寸法 | W 108.0×H 54.0×D 34.0mm |
重量 | 27枚撮:90g |
「写ルンです」はピントを合わせの必要がない。では何故ピントが合うのか?それは「写ルンです」に使用されているレンズ「f=32mm F=10」が可能としている。
写真のピントの合う範囲は、レンズの絞り・レンズの焦点距離・撮影距離によって決まるのだけれど、この「f=32mm F=10」のレンズにより、表の撮影距離範囲を見てもらえば分かる通り、ピントが合う距離は1m以上離れていれば、どんな初心者でも撮影できるように絶妙に設計されている。
要は1m以上離れていればピントが合うように「f=32mm F=10」のレンズを採用し、本来撮影に必要なピント合わせを排除した構造となっている。
大衆に愛された軽量コンパクトで操作性も簡単なフィルムカメラ「写ルンです」
「写ルンです」がここまで多くの人に愛されたのはポケットに入るような軽量コンパクトなサイズ感と、ピント合わせを必要とせずボタンを押すだけで撮影できる簡単な操作性の2つの要因が考えられる。
また本来フィルム一眼レフカメラで撮影する場合は、まずネガフィルムの装填をしなければならない。また撮影時には被写体にピントを合わせて撮影する必要がある。そして撮影が終わればネガフィルムを取り出すといった作業必要となるのだけど、これを全部取っ払ったのが「写ルンです」だ。
そして何よりネガフィルムを取り出す時の最大のリスクである感光の恐れがなくなったのも、当時は画期的だったんだろうなぁ。
こんなに凄いカメラをコンパクトで再利用もできるので、環境にも優しく開発してしまうのだから富士フイルムやっぱり凄過ぎる。
気軽に扱えるので撮影が楽しい!「写ルンです」を使った感想と作例
「写ルンです」でしっかり撮影するのは今回が初めて。使ってみた感想としては、撮影がめっちゃ楽しい。そしてピントを合わせる必要がないので、あっという間に撮り終わる。
フィルム一眼レフカメラってネガの価格や現像代を考えると失敗できないと思ってしまい、嫌でも撮影に力が入ってしまうけれど「写ルンです」の場合だと、その力みが無くなる。
それはピント合わせの必要が無くなり、ある程度完成された写真が約束されているからだろう。良くも悪くもかもしれないが、これほどシャッターが軽いフィルム撮影もないだろう。
朝早くから飛行機が飛んでいた。どこへ行くのだろう。薄暗い中で、しかも「写ルンです」で撮影したので写るかどうか心配だったけれど、品名の通りしっかりと写るんですしてくれました。
既に船が何隻か運航していた。波は穏やかで浜には人もおらず、とても静かな時間が流れていた。フィルムカメラらしい周辺減光(写真の四隅が暗くなる現象)やノイズが目立つけれど、これはこれでフィルムの味として楽しむ。
奥さんとここに来るのは今回で4度目なのだけど、早朝に来るのは初めて。まだ6時だっていうのに既に釣り人がいる。まぁこれだけロケーションも良いからなぁ。
いや〜心の底からフィルムを楽しめた。27枚あっという間に撮り終えてしまった。今のデジタルカメラのシャープな写真とは異なり、ぼんやり滲むような荒い画質が良い。
その荒い画質が、デジタル写真と絵画の中間のような、なんとも形容し難い雰囲気にしているのだろう。これをデジタル世代の僕達は「エモい」や「ノスタルジー」「シネマティック」と言い換えて古いモノを新感覚として楽しんでいるのだろうな。
「写ルンです」が歩んできた歴史
「写ルンです」が販売されてから30年以上が経つ。ここまで長く愛されるカメラもそうそう無いので、そんな「写ルンです」の栄枯盛衰を大雑把に記しておこうと思う。
まずは1986年にISO100の初代モデルの「写ルンです」を発売。この当時は110フィルム(ワンテンカメラ)と呼ばれており今の形状とは全く違う形のカメラだった。
翌年の1987年には2代目である「写ルンです Hi」が登場。この頃に135フィルムが採用され、大凡現代の形状と変わらない「写ルンです」が発売された。
それからフラッシュ搭載のカメラや望遠のカメラ、パノラマが撮れるタイプや接写が撮れるタイプだったり、はたまたモノクロが撮影できたり水中で撮影できたりなど、ほぼ毎年新しい写ルンですシリーズが発売され、昔は様々なバリエーションがあった。
そして2001年が「写ルンです」の最盛期となり、世界で1億本を売り上げる。その頃と同時期に現在で唯一販売されているモデル「シンプルエース」が発売された。
そんな一時代を築いた「写ルンです」の人気も陰りを見せるようになる。2002年に入るとデジタルカメラがフィルムカメラの出荷台数を超え、プリクラの浸透やガラケーの登場などもあり、実質カメラ界もこの年からデジタル化の転換期を迎えることとなった。
それからも夜景撮影に特化した「写るんです Night&Day」なども発売されたが、デジタル化の波に抗えず、生産をアメリカの工場のみにするなど、事業衰退を余儀なくされた。
そして2019年には水に強い「写ルンです New Waterproof」の出荷が終了となり、実質現在販売されている「シンプルエース」のモデル1種類のみが生き残っている。
まとめ
今年は「写ルンです」を持って原岡海岸に訪れてみた。初めてしっかり「写ルンです」を使ってみたのだけど、フィルム一眼レフとは違い、良くも悪くもバシバシとシャッターが切れた。気付けばあっという間に27枚撮影し終えていた。
そしてデジタルカメラでは撮れないような、荒い画質が古くもあり新しくもあり、情緒溢れる雰囲気に仕上がるので、デジタル世代からしてみれば、まさにエモーショナルで素晴らしいカメラだった。
苦しい時代にこんなに素敵なコンテンツの残し続けてくれている富士フイルムには本当に感謝しかないですね!昨今巻き起こっているフィルムブームも少しでも長く続くようにと願うばかりだ。
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