長らく35mmの焦点距離に憧れてた。
僕の憧れる写真家の方が、好んで35mmのレンズを使用しており、風景を取り入れたポートレートを撮影している。被写体との距離感だったり、背景の写りが好みで、いつか35mmのレンズを持ちたいと思っていた。
そんな矢先、今年の3月にSONYの「G Master」シリーズから新しく35mmの広角単焦点レンズ『FE 35mm F1.4 GM』が発売された。同時期に発表された50mmのGMレンズも一瞬悩んだが、ずっと憧れていた35mmのGMレンズを購入したので、作例と共にこのレンズを紹介していく。
関連記事:【作例・レビュー】SONY FE 135mm F1.8 GMのとろけるようなボケ味と圧倒的な描写力
名称 | FE 35mm F1.4 GM |
レンズマウント | ソニー Eマウント |
対応撮像画面サイズ | 35mmフルサイズ |
焦点距離 | 35mm |
絞り値 | F1.4(開放絞り) F16(最小絞り) |
最短撮影距離 | 0.27m(AF時) 0.25m(MF時) |
最大撮影倍率 | 0.23倍(AF時) 0.26倍(MF時) |
画角 | 63° |
レンズ構成 | 10群14枚 |
フィルター径 | 67mm |
質量 | 524g |
「G Master」シリーズには無かった小型軽量型の大口径レンズ
まずこのレンズに驚いたのは、レンズ本体の軽さ。箱からレンズを取り出した時に、思わず「軽っ」と声を上げてじまった程。
「G Master」シリーズと言えば、美しい描写を実現する為に、大口径で複雑な光学設計となっているので、どうしても重たくなってしまうイメージがあった。今回はそれを良い意味で裏切ってくれた。





絞り羽は11枚。それでもって質量は524gと、F1.4の大口径レンズと考えれば、驚く程に軽く感じた。
ZEISSのランナップから、同じスペックである「Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA」のレンズよりも一回り小さく、質量も100g以上軽くなっている。
意外と嬉しいのは、aシリーズのボディにしっくりくるサイズ感。ミラーレス一眼あるあると言うか、仕方のないことだが、ボディがコンパクトな分、ズームレンズなどを着けると、どうしても頭でっかちになってしまう。


ストラップを首からぶら下げて持ち歩いても、レンズが下を向いてしまい、どこかバランスの悪さを感じていたが、小型軽量にスポットを当てたこのレンズは、その点のストレスが最小限に抑えられている。
35mmの焦点距離はポートレートだけでなく、スナップなどでも重宝されるレンズなので、街中でも気軽にストレスなく持ち運べるのは嬉しい。
「G Master」らしい高い解像力
現在SONYが持つ全ての技術を結集して開発されたのが「G Master」シリーズであり、現行のSONYレンズのラインナップでは最高峰レンズとして位置付けられている。
公表するメーカーによって多少の誤差がある為、一概にMTF曲線(レンズ性能を評価する指標のひとつ)だけではレンズの良さは決められないが、それでもこのレンズは他の35mmのレンズを圧倒する数値を出している。
先ほど紹介したZEISSレンズのランナップで、同スペックである「Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA」は、今までプロのカメラマンや写真家の人が好んで使用してきた名玉レンズだが、そのレンズの性能すらも上回っている。
レンズの構成は10群14枚で、ED(特殊低分散)ガラス1枚の採用により、大口径ながら、色収差などの諸収差を美しく補正。更に2枚の超高度非球面XAレンズにより、画面全体で高い解像性能を発揮している。


写真左側がF1.4、右側がF8で撮影した写真。この超高度非球面XAレンズは「G Master」シリーズに備わる特有の技術で、非常に優秀。収差が大きく解像度が下がるF値開放と、収差が少なく解像度の高いF8の写真の精度にそこまで差が無くなっている。


上の夜景写真を拡大トリミングしたもの。同じく写真左側がF1.4、右側が F8で撮影した写真。歪みや収差が発生しやすい、写真の端側を切り取ってみた。拡大して見ても、ほぼ違いは無いように感じる。敢えて文句を言うのならば、左側のF1.4の写真の方が、若干光が滲んで見えるくらい(特に山の麓にあるオレンジの光)
写真を大きく引き伸ばしたり、トリミングでもしない限り、違いが分からないので、商業用の撮影でもない限り、気にしなくても良いレベルだと思う。
広角なのに良くボケる美しい描写力
35mmは広角レンズに分類されるレンズだが、F1.4の大口径レンズなので、広角の割には非常に良くボケる。また先述の「G Master」ならではの光学設計により、輪線ボケなどもなく、ジワ〜と美しいボケが楽しめる。

そんなSONYの高い技術により、強い太陽光の写真でも、ゴーストやフレアはほとんど確認できなかった。フリンジは若干見られるが、それでもほぼ気にならないレベルなので、撮って出しでも問題無く使えると思う。
明るいレンズなのでシャッタースピードが稼げる為、気軽に本当に幅広いシーンで使用できる。ポートレートも勿論だが、個人的にはボケを生かした、薄暗い時間帯の東京のスナップ写真を撮影したい。
物撮りなどに嬉しい最短撮影距離0.27m
カメラが趣味でも、最短撮影距離から接写をする機会は、なかなかないと思う。あっても花や身体の一部を撮影する時くらいだろうか。ただ僕のように、記事で紹介する為の「物撮り」をする時には、この最短撮影距離に左右されることが結構ある。
特に小さい物を撮影する時は、被写体にそれなりに寄らないと、写真で伝わりにづらかったりする。生憎マクロレンズも持っていない為、物撮りをする時、この接写問題にはよく悩まされていた。

使うシーンが限られてしまう為、少し地味な性能に感じる人もいるかもしれないが、このレンズの最短撮影距離は0.27mまで寄れる。
僕が所持しているレンズでも、一番寄れるレンズで0.38mなので、実質10㎝以上被写体に近づくことが可能となった。
たった10㎝と思う人もいるかもしれないが、実際に10㎝距離をずらして撮影してみて欲しい。写り方がまるで違うのが分かると思う。地味な話だが、間違いなく撮影の幅、というか写真の見せ方の可能性はグンと上がったと思う。
作例
このレンズで撮影した写真たち。こんな感じかぁ程度に参考にして頂けると嬉しいです。レタッチはLightroom。
FE 35mm F1.4 GMを使ってみて気になった点
結果から言うと、現時点でこのレンズへの不満は、特に見当たらなかった。それ程に、このレンズには満足している。ただ強いて挙げるのであれば、AFの速度が少し気になった。
AFの速度が気になるとは言えど、決して遅い訳では無い。寧ろ、素早いAFに分類されると思う。しかし望遠GMレンズの「FE 135mm F1.8 GM」のような、超高速AFと比べると、やはり若干見劣りしてしまう。

「FE 135mm F1.8 GM」の場合は、ピントを押した瞬間には、既にピントが合っていた。良い意味で、異常な程の性能だったが、あの感動は今回のレンズには無かった。
と言っても、欠点という程でもないので、使用していて全く不満は無い。贅沢な見解ではあるが、唯一どうしても絞り出すのであればその点くらいだろう。
まとめ
個人的な感想としては、やっぱり35mmの画角が一番好きかもしれない。風景を活かしたポートレートが好きで、撮影していて楽しいし、広角なのに大きくボカせるので、表現の幅も広がる。
またコンパクトで軽量なので、絞り環なども操作し易いし、ストレスなく持ち運べるのが嬉しい。シーンを選ばずに、気軽に使えるので、現在所有しているレンズの中で、今後最も活躍しそうなレンズだ。
SONY以外にも、各社から数多くの35mmレンズがラインナップされているが、性能と使い易さは群を抜いていると思うので、高価ではあるが、オススメしたい一本だ。
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