写真のコト

エモい写真が撮りたい人にオススメしたい参考書『写真からドラマを生み出すにはどう撮るのか? 写真家の視線』

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新生活の準備の為、家電を見にヨドバシカメラへ。ついでに無駄にカメラコーナーに立ち寄り、ウロウロと徘徊していたところ、普段は立ち止まらないカメラ関連の本売り場で、なんとなく足が止まる。そこで偶然気になる本のタイトルを見つけた。

パラパラと軽く内容を見て、偶然目にした「写真は言葉で熟成する」という一文に心を打たれ、情景写真家である髙橋伸哉氏が手掛けた著書写真からドラマを生み出すにはどう撮るのか? 写真家の視線』をそのまま即購入した。

この本には情景写真家である高橋伸哉氏による『心を動かす写真はどう撮るのか』がプロならではの視線や技術、哲学が綴られている。

また個人的な解釈になってしまうが、情景を今時の言葉に置き換えると、情景=感情が動く=エモい(emotional)だと思ったりもする(一般に使われているエモいの使い方が多様化し過ぎていてよく分からなくなっているけど)。

素晴らしい本なので「エモい写真が撮れる!」と短絡的な言葉で表現したくない気持ちもあるが、高橋氏の情景の表現の仕方、考え方が見やすく、分かりやすく語られているので、本当の意味で、エモい写真が撮りたい人には参考になると思うので、是非オススメしたい。

写真からドラマを生み出すにはどう撮るのか

まず最初に『写真からドラマを生み出すにはどう撮るのか? 写真家の視線』がどういう本なのか。タイトルでは分かりづらいが、「ハウツー本」というより「エッセイ本」のような内容となっている。

写真からドラマを生み出すにはどう撮るのか写真からドラマを生み出すにはどう撮るのか

エッセイ本とは言っても、文章がビッシリと書かれている訳ではなく、高橋氏の情景写真に対する考え方が「光・色・五感・探る・視線・技術・行方」の7つのテーマ毎に簡潔にまとめられている。

また1ページ毎に、写真と共に解説して頂いているので、情景写真とはなんなのか、心を動かす写真はどう撮るのか、目には見えない、何とも形容し難い表現だが、写真集を見ているような感覚で、写真と文章を照らし合わせながらイメージできる為、エッセイと言っても読みやすい内容になっているように感じた。

改めて光(ライティング)の大切さについて考えさせられる

光なのか、色なのか、形なのか。何を優先して撮影するかは、人それぞれなので、正解は無いと思うが、情景的な写真を撮る上で、如何にライティングが大切か「光の持つ力」や「写真への影響」など、プロ目線で解説してくれている。

「光が大切なんて事は誰だって知ってるよ」
ただ漠然とそのように認識している人が多いと思うが(僕もその一人)この本ではもう少し、深掘りをして光について書かれている。

淡く優しい早朝の光淡く優しい早朝の光

一言で「光」と言っても、特性は様々。爽やかな朝の光なのか、日差しの強い昼の光なのか、赤く染まる夕方の光なのか、それとも雨が降りそうな薄暗い曇天の光なのか。もっと言ってしまえば、光の色は暖色なのか寒色なのか、自然光なのか人工光なのか。

光のロケーションなんて時間によって、場所によって一瞬一瞬で変わると思うが、「こんな光だから、こう撮ろう」とか「こんな光だからモデルさんにはこんな表情をしてもらおう」という内容が写真と共に記されている。

僕のように、ただ漠然と良い光を探すのではなく(光を探す事は大切とは思うけど)その光をどう使うか、どう光を操るかが写真家目線で、写真と共に掲載されているので、情景写真を作りだす上で、如何に光が大切か、改めて認識させられる内容となっている。

暗がりの太平洋暗がりの太平洋

撮影はコミュニケーション

2021年の僕の目標にポートレート撮影の上達を掲げている訳だが、正直に言うとこれまでの経験値はからっきし0に近い。普段から奥さんを被写体にして撮影させてもらっているので、完全に0では無いかもしれないが、ここでの話はそうじゃない。

被写体であるモデルさんと初めましてから始まる撮影の話だ。百聞は一見に如かず、モデルさんに依頼して経験してみれば良い話だが、これが思った以上にハードルが高い。

自分の写真が納得してもらえるのか、撮影中に一緒に楽しんでもらえるのか、コミュニケーションは上手く取れるのか。僕はいつまで経ってもチキンボーイなので、どうしても不安が先行してしまい身動きが取れなくなってしまう。改善点だと分かっているのですが…いやぁ〜本当に情けない。

まぁこの手の悩みは僕だけではないはずだと、自分を都合良く慰めている訳だが、有り難いことに、この本の中にその手の悩みをどうしたら良いのか、高橋氏が培ってきた経験を元に記されている。

凪秋の風が吹き抜ける

情緒的なポートレート撮影をする為には、少なからずとも、それっぽい空気感作りだったり、表情作り、場合によっては、衣装選びなど、モデルさんとの打ち合わせも必要になってくる時もあるだろう。

どうすれば情景的で、エモくモデルさんを撮影できるか。円滑で良い雰囲気で撮影できるよう、どのようなコミュニケーションが必要か、撮影中はどのように振る舞えば相手の方に楽しんでもらえるか。

また異性を撮影するにあたってのエチケットや注意が必要なのか。それ以前に撮影前のモデルさんとの打ち合わせで確認することなどが一通り記されているので、個人的には非常に勉強になった。

写真・カメラの答え合わせ

厳密にいうと、写真には正解はないと思っている。この本の中で高橋氏も冒頭で述べている。法に触れない、誰かに迷惑をかけない限り、撮影方法なんて個々の自由だと思う。しかし、自由だからこそ、自分の撮影がこれで良いのかと悩む時がある。

正解はないが、自分の中で一つの指標として正解を決めるのならば、実績のある写真家の、写真への考え方が正解になるのだろう。そんな時に今回の本の中に記されている、高橋氏の考え方が正解となるので、普段疑問に思っていることを一つ一つ答え合わせをしていく。

要は、自分の考え方とプロの考え方を照らし合わせていく。そうすると自分と同じ考えが記された時は安堵するし、新しい発見も結構見つかる。

夕暮れの青春夕暮れの青春

先述の通り「写真は言葉で熟成する」という一文に心を打たれ、長らくあった僕の中の疑問が解消された。SNSなどに載せるキャプション問題だ。

僕が若い年齢層のカメラサークルに参加していた時、SNSに写真を載せる時のキャプションが「ポエムみたい」と嘲笑するような意見を何度か耳にしたが、それってそんなに変なことかなと考えたことがあった。自分の作品をSNSに載せていて、その表現方法は自由なはず…と長らくモヤモヤしていた時期もあった。

そんな折、「写真は言葉で熟成する」というこの本の一文に心を打たれた訳だ。高橋氏曰く、写真をより良く見せる為、添えるキャプションは撮影と同じくらい重要だと述べている。場合によっては、添える一言で写真が台無しになってしまうこともあると言う。

写真の意味について考えてみる写真の意味について考えてみる

ただ説明もなく、一本松の写真を見せられるよりも「奇跡の一本松」や「大津波にも耐えた一本松」のように一言あるだけでも、見方が変わるし、想像が膨らめば感情も動く。要は、情景(エモい)を生み出すには文章次第で決まると言っても過言ではないのかもしれない

先程のポエムの話もそうで、本人が作品をより良く見せる為に、考えて添えたキャプションだ。きっとその表現方法で正解だったんだろう。長らくあった自分のモヤモヤも解消された気がする。

他にも、「ピントが目線にあっていることが必ずしも正解ではない」や「プリセットについて」「写真と今後のSNSの活用」など、高橋氏の考え方を知り、新しい発見も多くあり勉強になった。

まとめ

情景写真を撮る。ではなく「情景写真を撮る為に組み立てていく」というか、感性のみで撮影しているのではなく、しっかり考え込まれているんだと実感した。現在活躍されている1人の写真家の哲学がこの1冊に詰まっていると思うと、それだけでも読んでみる価値はあると思う。

と言っても、この本を読んだからと言って、情景写真が撮れるようになる訳ではないと思う。そんなに簡単に「人の心を動かせるような写真」は撮れない。しかし多くの「気付き」もあったので、それをヒントに自分で考えて、ようやく情景写真が撮れるのだと思う。

何となく写真の撮り方に悩んでいる方や、考えて撮影するワンステップ上の撮影ができるようになりたい人にも、沢山のヒントが詰まった本なので、是非オススメしたい。

著者:高橋 伸哉 (タカハシ シンヤ)
写真作家・フォトグラファー。人物、風景、日常スナップなど、フィルムからデジタルまでマルチに撮影する。作家活動のほか企業案件もこなす。海外や国内の旅記事や写真のスナップ記事の連載を執筆。共著に『SNS時代のフォトグラファーガイドブック』(玄光社)がある。SNSフォロワー数は総数45万人以上。写真のコミュニティ&学びの場として澤村洋兵氏と運営するオンラインサロン「しんやとよーへい」は講師、運営を含め500人を超える大所帯に。各地でフォトウォークも開催している。

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